福島原発の本当の現状
福島原発廃炉へのロードマップは最初に発表されて以降何度か改訂されていますが、事故を起こした原子炉の現状を知る人ほど、現段階での計画通りの実行はほぼ困難と捉えています。
そもそも燃料デブリの取り出し方法自体が、作業ロボットの性能向上など今後の技術開発がスムーズに向上した場合を想定して考えられており、それぞれ燃料デブリの位置や状態が違うと考えられている3つの原子炉格納容器から同じ方法で取り出すことは難しいと考えられています。
さらに原子炉格納容器からの取り出しだけでは済まないであろうことも想定されており、水中での作業が可能なロボットのみでは取り出すことはおろか、燃料デブリに近づくことすら困難であることも予想されます。
調査の過程で、燃料デブリは事故を起こした1号機では原子炉圧力容器の炉心部にはほとんど残っていないらしいことが明らかにされ、2号機と3号機では圧力容器の底に燃料デブリが見られるものの、ごく一部しか残っていないと見る向きが大半です。
まさにメルトダウンを超えた最悪のメルトスルー状態ということで、圧力容器を突き破っただけではなく原子炉建屋地下のコンクリートに達して溶解しながら進み地下水脈に当たってようやく固まっている状態ではないかと推測されています。
そう考えた場合、ようやく体裁を保っている程度の凍土遮水壁では汚染水の海への流入は到底食い止められず、現在も相当な量が地下水と一緒に流出しているのは明らかです。
福島原発は事故後ほどない時期にチェルノブイリ原発のように石棺で封じ込める案が出されたこともありましたが、福島県の大反対で立ち消えとなりました。
福島の人々の故郷への思いを尊重したというよりも、石棺に踏み切った場合の賠償金その他を国も電力会社も到底支払えないことも考慮されたはずで、実際、現在徐々に解除されている立ち入り制限があった居住区域内への帰還が勧められるようになっているという点からも、これ以上住民の避難への援助を行いたくないといった考えが見え隠れしています。
チェルノブイリと福島の違い
チェルノブイリと福島とで事故のタイプや放射能汚染の実態は違っていますが、チェルノブイリが現在でも居住不可と定めているエリアを東日本に当てはめた場合、首都圏の一部も入ると言われており、日本が居住可能と定めた基準に対してはチェルノブイリからの放射性物質の被害を受けたヨーロッパ諸国からも疑問視されていますが、その点を指摘する声が上がる度に風評被害を増長しているとして非難し封じ込める人が多い状態です。
チェルノブイリの石棺は、工事に携わった人々が決死の作業を行いようやく核燃料の封じ込めに成功したとされ、人命軽視で作業が実行できた旧ソ連時代だったからこそ可能だったと言われます。
福島の場合は現在までの間にアトックスなど多くの関係者の努力で表向き平穏な状態を保っているように見えますが、実際は燃料デブリはごく一部しか確認出来ていないうえ、次に東日本大震災と同じ規模の地震と津波が襲った場合、現実にどうなるのか想定されているのかどうかも危ういはずです。
五輪開催も運を天に任せている状態で、開催期間中に絶対に大地震は起きないと確約されていると関係者全員が信じ込んでいる状態の元に行われることになります。
福島原発の真の問題
福島原発の真の問題は、北朝鮮の核ミサイル問題によって憂慮の対象が逸らされたこともあって、現状についてますます関心が薄れてしまった面があり、案じられている状態です。
東日本大震災から7年目を迎えるほどになっているだけに、福島をはじめ東北で学ぶ小学一年生たちにとって震災も原発事故も生まれる前の出来事になっています。
幼い子ども達だけでなく、首都圏で暮らす若い世代は原発事故が大変な出来事だったという記憶はあっても、完全に過去のことといった意識を持っている人が少なくないとされ、人によっては福島原発でまだ何か作業をやっているらしいと知って驚くとも言われ、福島原発については廃炉問題も汚染水問題も、現状や先々のことについて世間一般で議論されることは都合が悪いと考えている人が少なくないため、今後もこの傾向が続いて行くと考えられます。
事故直後には大いに関心を持っていた人々も日常に追われ、時おり報道される時に少し心を向けるだけとなっており、風化が表面化したことは明らかです。
事故後ほどない時期から福島以外の人が放射線の被害を怖がると一斉に叩く人も少なくなかったことで、半減期を迎えるのはまだ遠い先の放射性物質が引き起こす健康被害についても、正面から論じられることが無いまま年月が過ぎています。
チェルノブイリ原発事故後に甲状腺がんを発症した人が増えたのは5年から6年ほど後と言われ、その時期を迎えて以降の福島の現状すらあまり報道されなくなったことも案じられている点です。
自然に風化しているというよりも、さまざまな憂慮すべき事態から目を逸らすために風化が推奨されている気配もあり、今一度未来を真剣に考えた対策への議論が必要と考えられます。