日本が抱える教育問題の一つに体罰があります。
法律では教師が生徒に肉体的苦痛を与えることを体罰と定義しており、直接殴らなくても長時間正座をさせるといった行為を含まれます。
しかし教師が生徒に指導を行うことは認められているため、叱ったり注意したりすることは体罰にはなりません。
懲罰として宿題を増やすのも法律で咎めることは不可能です。
教育現場で体罰が問題になる時、必ず体罰なのか懲罰なのかが争点となります。
生徒や保護者が前者を主張しても、学校側は後者の認識でいることがほとんどだからです。
体罰が問題となった現在でも、許してもらえるという学校側の無責任で甘い姿勢が露呈しています。
そもそも体罰が学校教育法で禁止されているのは、それが生徒に深い傷を与えるからだと教育者の畑恵氏は言います。
心理学ではモチベーションは良い人間関係を築いて形成されるもので、殴って無理やり勉強や部活をさせてもパフォーマンスは向上しません。
例え非行に走ったとしても殴って生活を改めさせることはできず、かえって社会への反発心が大きくなります。
体罰によって社会のルールを教え、優秀な人間を育てることはできないということです。
また小学校の頃から体罰が定着してしまうと、圧倒的な無力感に苛まれることになります。
小さな子どもが大人に力で勝つことはできず、殴られている間は抵抗できない暴力に諦めさえ感じます。
その結果、自立心の育成が妨げられ何事にも消極的になります。
大人になってから幼少期の暴力について語りだす人がいますが、彼らがようやく話せるようになっても精神的な症状が改善するまでにはさらなる時間がかかります。
暴力事件を起こす人物は、幼少期に同じように暴力を受けていたというデータもあります。
これは心理学でモデリングと呼ばれ、理由や必要性があれば暴力をふるって良いと考えてしまいます。
暴力が当たり前となった教育現場で育つと、次世代を担う子どもたちに再び暴力を教えるという悪循環です。
生徒が教師の真似をして暴力的になり、いじめが横行するリスクも問題です。
体罰にはデメリットしかなく、教育現場では「愛のムチ」に頼ってはいけません 。教育基本法では教師の体罰に対し罰則を設けています。
一度だけ認められた場合は口頭注意、生徒に後遺症を追わせたり死なせたりした場合は懲戒免職です。
懲戒免職は教員免許の取り消しを意味するので、その教師は二度と教壇に立つことができなくなります。
公立教師に対して設けられたものではあるものの、私立学校でもこれを参考に処罰を決めており学校によって対処が大きく異なることはありません。
処罰を下すという姿勢は保護者を安心させますが、実際に自分の子どもが亡くなったり社会に出られなくなったりすれば最悪の事態です。
大人たちは最悪の事態を招かないように、小さな体罰に対しても厳しい態度をとらなければなりません。
そもそも学校の外で殴ったり蹴ったりすれば、犯罪なので訴えて法律で罰することができます。
しかし教育現場では少し複雑になり、訴える相手が教師本人ではなくなります。
これは公立教師が体罰を行った時ですが、彼らは公務員として扱われます。
国家賠償法で公務員の犯罪は都道府県で責任を負うため、県立高校では県、市立高校では市を訴えることになります。
どちらにせよ公共機関を相手に裁判を起こすので、体罰をした本人から賠償金をとることすらできません。
二度と生徒に悪影響を与えさせないために逮捕してもらうには、警察を動かす必要があります。
ただし警察は教育現場で起きた問題はその団体で解決するべきという考えを持っており、刑事告訴しても関わりを持ちたがりません。
過去には悪質な体罰を認め傷害罪と暴行罪で在宅起訴したことがありますが、一度の体罰では動いてくれない可能性が高いです。
よって現状は体罰が発覚したら、学校と教育委員会を動かすしかありません。
体罰を受けた日付や経緯をメモに残し、内容証明文書で教育委員会に送ります。
専門知識を持つ弁護士に依頼して作成するのが一番です。
この時に録音データや他の生徒の証言などがあると、より証拠の信ぴょう性が上がります。
怪我や精神疾患などで病院の治療を受けた場合は、領収書も保管しておきましょう。
自分の子どもが体罰を受けたと知れば保護者は冷静ではいられなくなりますが、学校に大声で問い詰めるなどは控えます。
強い物言いになると、隠蔽したりかえって生徒への対応を悪くしたりするためです。
学校の隠蔽体質は以前から指摘されており、これも暴力を助長させているといえます。
問題が発覚すると、必ず「しつけ」という弁解をしますが暴力でしか指導できないのは教師の力不足です。
教育現場でも体罰をなくそうと努力はしつつも、SNSで衝撃的な暴力シーンが拡散されるなど全国各地で未だ問題は残っています。
教育者たちは暴力以外の方法で社会ルールを学ばせるノウハウを習得しなければなりません。
最終更新日 2025年5月15日 by newton